パーマネントウェーブ

パーマネントウェーブ用剤の歴史

理美容業界で現在使用されている薬剤のほとんどは近代理美容の黎明期に開発され、その時よりあまり変化していません。

毛髪科学を知る上であまり重要視されていませんが、過去を知る事で新しい発想も生まれる事があります。簡単に振り返ってみましょう。

パーマ歴史上に登場したパーマパーマ技術のルーツをたどると、紀元前3,000年頃までさかのぼると言われている。当時使われていたのは、木の枝と(粘土)。髪にロッドを巻く代わりに、木の枝を髪の毛に巻き、泥でパックしカールさせていたという。

しかし、時間がかかるわりに、カールは持続しなかった為、一般大衆にまで普及する事はなかったようです。

パーネント・ウェーブが登場するのは、1872年にパリの髪結師マルセル・グラトーが考え出したヘアーアイロン式。今の様な電熱と液体を利用するものではなく、熱したこて(今で言うアイロン)を使ったものだが、これも髪が濡れたら元に戻ってしまうという欠点はそのままでした。

近代パーマ

1905年、イギリスで理髪師のネスラー(Nessler)というドイツ人がアルカリと電熱器を利用したウェーブ法を発明、1908年特許をとりました。これが、現在のパーマの原点といえるものですが、当時は硼砂(ほうさ)と電熱器につながったクリップを8キロ分も頭につけた状態で6〜8時間もかかる上、料金は高額でした。それでも、イギリスの社交界の女性達はこぞってパーマをかけたといいます。(いわゆる電髪の原型)

現在のコールドパーマの原点は今から大体84年(1918年頃)くらい前にアストベリー(Astbury)やスピークマン(Speakman)らによってケラチンの分子構造が解明され、1936年チオグリコール酸の化学反応を人毛ケラチンに応用した技法が開発され現在のコールドパーマの原形ができました。実際に商品として世に初めて出たのは1940年アメリカでホームパーマ用として発売されたのが始めてで、当初は業務用品としてではありませんでした。美容界は顧客の減少を心配しコールドパーマは危険であると当時のアメリカの美容組合関係者は批判しました。ある美容関係者が大学にコールドパーマ液を分析を依頼しその危険性を世にアピールする事を考えましたが、かえってその安全性や操作性の良さがコールドパーマを世に広める結果となりました。さらに、ホームパーマで髪を傷めてしまった女性達が髪をきれいに治す為に美容室に殺到する結果となり、パーマネントウェーブは美容室で隆盛を極める事になりました。

厚生労働省のパーマネント用剤の定義と基準

パーマネント・ウェーブ用剤は薬事法第2条第2項に、医薬部外品の一つとして定義されており、その規格は品質規格として定められている。

 パーマネント・ウェーブ用剤の効能・効果

毛髪にウェーブをもたせ、保つ。くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ

手足等の体毛及び眉毛・まつ毛への使用は現在のところ認められていない。

パーマネント・ウェーブ用剤の分類と品質規格

パーマネント・ウェーブ用剤は有効成分、効能、効果、用法により9種類に分類されており、それぞれに品質規格が定められている。一定の品質のパーマネント・ウェーブ用剤を供給する為に、細部にわたる具体的な条項を定めたものがパーマネント・ウェーブ用剤の品質規格です。

1.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールドニ浴式パーマネント・ウェーブ用剤

 一般に「チオ系コールド」と呼ばれているものである。

「コールド」と呼ばれる理由は処理条件が「室温」と規定されている為である。

従って、この薬品を用いて処理時に加温するのは法的には認められていない。

1剤のチオグリコール酸とアルカリで毛髪のシスチン結合(S−S)を切断し、

2剤の臭素酸ナトリウム又は過酸化水素でシスチン結合を再結合させる。

1剤中にはジチオジグリコール酸(一般に「ジチオ」と略される)の配合が4%まで認められている。

ジチオは反応調整剤と呼ばれており、チオグリコール酸が過剰に反応するのを抑制すると言われている。

2.システイン、システインの塩類又はアセチルシステインを有効成分とするコールドニ浴式パーマネント・ウェーブ用剤

一般に「シス系コールド」と呼ばれているものである。

1.と同様に処理条件は「室温」に規定されている。

1剤のシステイン又はアセチルシステインとアルカリで毛髪のシスチン結合(S−S)を切断し、

2剤の臭素酸ナトリウム又は過酸化水素でシスチン結合を再結合させる。

1剤中にはチオグリコール酸の配合が1%まで認められている。

これはシステインが非常に不安定な化合物である為(すぐ酸化されてシスチンに戻ってしまう)、

安定剤(酸化防止剤)としてチオグリコール酸の添加を認めたものである。

3.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とする加温ニ浴式パーマネント・ウェーブ用剤

 薬剤に配合されている有効成分やパーマがかかるメカニズムは「コールドのチオ」とほぼ同様であるが、

処理時に60℃以下での加温が認められている。

加温により反応が促進されるので、1剤のチオ濃度、アルカリ量、pHの上限が

「チオ系コールド」よりも低く設定されている。2剤は1.2.と同様。

4.システイン、システインの塩類又はアセチルシステインを有効成分とする加温ニ浴式パーマネント・ウェーブ用剤

シスの加温タイプ。

加温式チオと同様、60℃以下での加温が認められている。

シス濃度、アルカリ度の上限がコールドタイプよりも低く設定されているのも3.と同じ理由。2剤は1.2.と同様。

5.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールド一浴式パーマネント・ウェーブ用剤

チオタイプの1剤のみのパーマ液。

2剤処理は空気酸化により行うという事になっている。

その為、1剤のチオ濃度、pH、アルカリ度の範囲は狭く、上限も低く設定されている。

加温は認められていない。

一剤の濃度が低いためこの程度の還元なら、空気中の酸素で酸化されるため、2剤の必要がない。

ただし加温した場合は2剤を使用しないと酸化しにくく毛髪のダメージが起きる。

6.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とする第1剤用時調製発熱ニ浴式パーマネント・ウェーブ用剤

2種の1剤を用いる直前に混合して毛髪に塗付する。

一方に含まれるチオグリコール酸ともう一方に含まれる過酸化水素が反応(酸化還元反応)して、

発熱し、液温が40℃くらいまで上昇する。

過酸化水素に対して過剰のチオグリコール酸が配合されている為、

混合後はチオグリコール酸と熱が残る事になる。

この熱によりチオグリコール酸の反応性を高めて毛髪に強い作用を与えるタイプのパーマ液である。

2剤は1.2.と同様。

7.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールドニ浴式縮毛矯正剤。1剤、2剤の規格値、反応メカニズムは1.と同様であるが、

ウェーブや縮毛を伸ばすという点で、全く反対の目的で用いられる。

くせを伸ばすという目的の為、クリーム状のものが多い。

パネルの使用は断毛の危険がある為、禁止されている(多分、昭和62年より)。

コールド式であり、加温も認められていない。

8.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とする加温ニ浴式縮毛矯正剤。

1剤、2剤の規格値、反応メカニズムは3.と同様であるが、ウェーブや縮毛を伸ばすという点で、全く反対の目的で用いられる。くせを伸ばすという目的の為、クリーム状のものが多い。パネルの使用は断毛の危険がある為、禁止されている。加温式であり、60℃までの加温が可能。

9.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とし高温整髪用アイロンを使用する加温ニ浴式縮毛矯正剤。

1剤、2剤の規格値、薬品の反応メカニズムは3.と同様であるが、

更にアイロンを用いるという点が7.8の縮毛矯正剤と異なる。

毛髪への作用では、化学反応以外に、アイロンの熱による蛋白変性も利用していると考えられる。

薬剤作用時の加温は60℃まで可能。アイロンは180℃以下で用いる事。

現在使用されているパーマ原料

パーマネントウェーブ用剤(医薬部外品、化粧品を問わず)の主剤(還元剤)として

使われているものは次の通りです。

これらは全て−SH(メルカプト基)という部分を持っており、この部分が毛髪中のシスチン結合(S-S)と反応します。チオグリコール酸アンモニウムやシステイン以外でもメルカプト基があれば還元反応は行われ毛髪にパーマネントウェーブはかけられると言う事になります。

チオグリコール酸  HOOC−CH2−SH                     平均分子量(92)

システイン HOOC−CH(NH2)−CH2−SH                 平均分子量(121)

アセチルシステインHOOC−CH(NH2−COCH3)−CH2−SH平均分子量(163)

システアミン NH2−CH2CH2−SH                             平均分子量(76)

チオ乳酸 CH3−CH(SH)−COOH                           平均分子量(106)

 

 

 

 

 

1例としてチオグリコール酸の還元反応と酸化剤の酸化反応を示します

      チオグリコール酸               ジチオジグリコール酸

          ↓                      ↓

S-S┫+2HSCH2COOH   →   ┣SH SH┫+ HOOCH2C-S-S-CH2COOH

             ↑                       ↑

       毛髪のシスチン結合              シスチン結合の切断

切断された毛髪中のシスチン結合は2剤に含まれる酸化剤によって、再結合されます。

酸化剤が臭素酸ナトリウムの場合、次のような反応で再結合反応が進みます。

切断されたシスチン結合                 水

   ↓                        ↓

SH SH┫ + NaBrO3   →    ┣S-S┫ + 3H2O + NaBr

         ↑                       ↑

     臭素酸ナトリウム(ブロム酸ソーダ)        (臭化ナトリウム)

酸化剤が過酸化水素の場合は次のような反応で再結合反応が進みます。

 

切断されたシスチン結合            水

   ↓                  ↓

SH SH┫ + H2O2 → ┣S-S┫ + 2H2O

         ↑

       過酸化水素

カーリング剤

亜硫酸塩

一般的にノンチオと言われるものと最近になって使用される用になった薬剤原料亜硫酸塩(サルファイト)Na2SO3

亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム)は電髪の後期に使用されるようになった

当時はアルカリ剤を配合し電髪ソリューションとして利用されていました。

この薬剤は厚生労働省の定めたパーマネントウェーブ用剤基準に含まれていないため医薬部外品ではなく

化粧品として認可されます。

         +Na2SO3(亜硫酸塩)→|S・SO3Na NaS−|

|−S-S−|

         +NaHSO3(酸性亜硫酸塩)→|S・SO3Na HS−|

上記のように亜硫酸塩は加温することでシスチン結合が切断されます。

上記の|S・SO3Naをブント塩と呼びます

このブント塩は酸性に戻すことで|−S・SO3H HS-|になりやがて|−S−S−|に戻りますしたがってあえて酸化剤の2剤を使用しなくとも元に戻るため一般的な亜硫酸塩のカーリング剤に2剤はついていません。

しかし、毛髪中にこの亜硫酸塩は残るためその後のシャンプー時のお湯、ドライヤーの熱により再び反応が行われます。

ウェーブをかけるときには当然、ロットが巻かれていますが、その後のお手入れではロットに巻かれていませんので、カールは徐々に無くなっていきます。

システアミン

NH2−CH2CH2−SH 分子量76約70℃の融点を持つ白色結晶

高い生理活性作用を持ち医農薬中間体として使用される他、ヘアケア用、繊維処理剤、ポリマー改質剤、キレート剤、写真現像助剤など幅広い分野で使用されています。

特徴と問題点

今まで化粧品の原料として許可されなかったシステアミン塩酸塩は、規制緩和により配合できるようになりましたが、一番の問題点は安全性の問題です。

ウェーブ剤は頭髪にパーマをかける為に用いますがウェーブ剤を扱う美容師、理容師は素手で扱います。果して手に対する刺激は? 又、かぶれの問題は?ウェーブをつける頭髪は皮膚から生えています。皮膚の弱いお客さまは、かぶれたれりはしないのでしょうか?

システアミンは今後さらに研究が必要な薬剤だと思います。

システアミンの毒性反応

システアミンは毒性が高く安全性が高いとは必ずしもいえません。しかし、このタイプのカーリング剤(化粧品認可の為こう呼びます)は増えてくると思いますが、注意して使う必要がありますシステアミン塩酸塩をウェーブ剤の原料として配合して弱酸性だから頭髪を傷めない、パーマ剤ではないのによくかかる等と宣伝して拡販しているメーカーもありますが使用する場合注意が必要です。

助剤

ウェーブ1剤に含まれるアルカリ剤の解説

毛髪の還元反応にはアルカリは基本的に関係しません。では何故ウェーブ剤にはアルカリが含まれているのでしょうか?還元剤は毛髪のシスチン結合に対して水素を与える事でシステインにします。酸化剤はシステインに酸素を与え元のシスチンに戻します。この時の反応にアルカリは登場しません。1剤の還元剤の還元力はPHが高ければその反応は強くなります。

その他の毛髪の側鎖結合のうち、塩結合はPHがアルカリになれば結合力が弱くなり毛髪はさらに軟化します。膨潤とはケラチンのような高分子物が溶ける前に水をすって膨らんでいる現象で溶解の一歩手前の現象をいいます。この現象はPHが高ければ高い程強くおなじPHでも弱い毛髪程強くおきます。反対にPHが酸性側に強く傾いても毛髪は溶解します。

一般的に使用されているアルカリ剤の種類と解説

現在市場に出回っているウェーブ用剤は単体のアルカリを使用しているケースは殆ど無く

2種類叉はそれ以上のアルカリ剤を配合して作られているケースがほとんどで一概にデータ通りの反応は無いかも知れません。

しかしベースになっているアルカリ剤の傾向は表れますので参考になると思います。

カッコは分子量

アンモニアNH3(17)

弱いアルカリで揮発性が高い毛髪内部に残ってもそれほど長く残る事は無いので毛髪のダメージが少ないが揮発性がある為刺激臭が強い。

通常ウェーブ剤には0.7〜0.85%程度使用されている。

分子量(粒の大きさ)が小さく、低濃度でPHが上がる

膨潤率は非常に高いが時間経過とともに弱くなる

モノエタノールアミンC2H5ONH2(61)

有機アミンといわれる不揮発性物質、微臭がある(弱いアンモニア臭)

アルカリ性の強さはアンモニアより強く皮膚刺激はアンモニアより強い

膨潤率は高い

炭酸アンモン(NH4)CO3(96)

重炭酸アンモン(NH4)H.CO3(79)

アンモニアと炭酸ガスの結合した白色粉末水溶液にするとPH7.6〜7.8の微アルカリ性を示す。

PHの低いウェーブ効率の高いウェーブ剤ができるが時間経過とともにPHが高くなり膨潤力が上がる。くせ毛用のウェーブ剤(矯正剤とは違う)に適している。くせ毛は基本的に乾燥性なので薬剤の浸透が悪く膨潤率が低い為低PH高膨潤のウェーブ剤が適している。

その他のアルカリ剤

トリエタノールアミン(C2H5O)3N(149)

アンモニア、モノエタノールアミンより弱い有機アミンで一般化粧水にも使われる無刺激性のアルカリ、分子が大きくウェーブ剤に配合された場合作用が緩和されます。

苛性ソーダNaOH(40)

無機アルカリの中で一番強くウェーブ剤には殆ど使用されていません。石鹸の原料の一つです。

 

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